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「経済財政運営と改革の基本方針2026」における医療・介護提言の概要と課題

先日発表された、「経済財政運営と改革の基本方針2026」のうち、主として医療・介護・社会保障に関する記述を整理し、科学的根拠の観点から評価してみます。

1.提言の概要

この方針は、国民皆保険・皆年金を維持しながら、人口減少、医療介護人材の不足、物価・賃金上昇、現役世代の保険料負担に対応するため、医療・介護提供体制と給付・負担の双方を改革しようとする内容になっています。

主要な内容は、次の6点に整理できます。

① 公定価格への物価・賃金上昇の反映

医療・介護・障害福祉などの公定価格について、現場の人材確保、経営の安定、サービスの質を維持できるよう、物価と賃金の変動を反映させる方針です。

診療報酬改定後に経済情勢が大きく変化した場合には、年度途中を含む追加調整も検討するとしています。介護・障害福祉についても、他職種と遜色のない処遇改善を目指しています。

② 医療・介護提供体制の再編

2040年を見据え、病床数の適正化、医療機関の連携・再編・集約化、地域包括ケアシステムの深化を進めます。

その一方で、救急、小児・周産期、精神医療、訪問看護、在宅医療、看取り、中山間・人口減少地域の介護サービスなど、地域で不可欠な機能の維持も掲げています。

③ 人材確保、タスクシフト、生産性向上

DX・AI・ロボティクス、多職種連携、チーム医療を活用し、職員配置の柔軟化と生産性向上を進めます。

医師の地域・診療科偏在対策、看護職の特定行為研修、潜在看護職の活用、介護職員の確保・定着、医療介護事業者の協働化・大規模化も含まれます。一方で、2028年度以降の医学部定員削減も方針に盛り込まれています。

④ 給付と自己負担の見直し

現役世代の保険料率上昇を止め、将来的には引き下げることを目標に、次の改革を検討します。

  • 70歳以上の医療費窓口負担の見直し

  • 介護保険の2割負担基準の見直し

  • 金融所得・資産を反映した負担

  • OTC類似薬の保険給付範囲の見直し

  • バイオ後続品、長期処方、リフィル処方箋、地域フォーミュラリの推進

  • 休薬・減薬による治療の適正化

  • スイッチOTC化の促進

⑤ 医療DXとデータ活用

電子カルテ、電子処方箋、医療・介護情報の連携、公費負担医療や予防接種のデジタル化、医療データの二次利用を推進します。

さらに、クラウドに最適化された医療DX基盤、AIによる創薬・診断・医療機器開発、PHRの活用などを成長戦略の一部として位置付けています。

⑥ 「攻めの予防医療」

疾病の早期発見・早期介入、肥満症対策、生活習慣病予防、がん検診、認知症の早期診断、歯科健診、予防接種、健康リテラシー、リハビリテーション、女性の健康、健康経営などを一体的に推進します。

本方針全体としては、政策目的、対象、成果指標、実績データ、費用対効果を明確化し、EBPMによって予算編成と政策評価を接続することも掲げています。

2.科学的根拠から評価できる点

提供体制を維持するために、公定価格を経済状況へ連動させる方向は妥当

医療・介護は人件費比率が高く、価格を事業者が自由に設定できないため、賃金や物価だけが上昇すれば、実質的な報酬削減になります。経営データを把握したうえで公定価格を調整する考え方は合理的です。

ただし、病院・診療所・訪問看護・介護施設では、費用構造や収益性が大きく異なります。一律の改定率ではなく、職種別賃金、地域差、サービス別原価、患者の重症度などを用いた精緻な調整が必要です。

適切なタスクシフトには一定の根拠がある

プライマリケアにおいて、十分な教育を受けた看護師が医師の一部業務を代替した研究では、健康アウトカムは医師と同等または良好で、患者満足度も高い可能性があります。ただし、診療時間が長くなる場合があり、費用削減効果は明確ではありません

したがって、「配置基準を緩和すれば生産性が上がる」という単純な議論ではなく、教育、業務範囲、医師への相談経路、責任分界、報酬設計を伴う必要があります。また、看護師配置が多いほど院内死亡などが少ないという研究もあり、柔軟化を単なる人員削減として運用することは危険です。

電子処方箋やAIには、限定的ながら実証的な効果がある

電子処方や診療支援システムは、薬剤エラーを減らす可能性がありますが、患者アウトカムの改善までは一貫して示されておらず、入力選択ミス、アラート疲労など新しいエラーも発生します。

238人の外来医師を対象としたAIスクライブのランダム化試験では、一方の製品で診療録作成時間が対照群より9.5%減少し、仕事上の消耗やタスク負荷にも小さな改善がみられました。一方、もう一方の製品では時間短縮が有意ではなく、臨床的に重要な不正確さも「時々」報告されています。

DXやAIは有望ですが、導入自体を成果とせず、時間削減、安全性、患者経験、総費用を製品・用途ごとに評価する必要があります。WHOも、AIの医療利用にはデータの代表性、透明性、人間による監督、説明責任を求めています。

3.科学的根拠からみた主要な課題

① 「再編・集約化」が質の向上を保証するわけではない

高度手術など、症例数と治療成績の関係が認められる領域では、一定の集約化が合理的です。しかし、医療機関の合併・再編そのものについては、医療の質が改善するという強い根拠はありません。病院合併に関する系統的レビューでも、質指標の改善または悪化について確実な結論は得られていません。

したがって、組織単位で「病院を減らす」のではなく、機能単位で考える必要があります。

高度急性期医療は集約する一方、救急の入口、プライマリケア、回復期、在宅医療、訪問看護などは地域に分散して維持するという設計が必要です。評価指標には死亡率や費用だけでなく、搬送時間、受診不能、家族の移動負担、在宅療養の継続可能性を含めるべきです。

② 地域包括ケアは、包括的に導入するだけでは成果が出ない

地域包括ケア、多職種連携、ケースマネジメントは概念として妥当ですが、介入内容が曖昧になりやすい問題があります。

地域で生活するフレイル高齢者を対象としたコクランレビューでは、ケースマネジメントは通常ケアと比べて、死亡、入院、施設入所、生活の質、費用に大きな差をもたらさない可能性が示されています。

これは連携が無意味という意味ではありません。むしろ、全高齢者に一律に行うのではなく、

  • 入退院を反復している

  • 認知症と多疾患併存がある

  • 独居または介護力が乏しい

  • 医療・介護間の情報断絶がある

  • ポリファーマシーや服薬管理の問題がある

といった高リスク層に対象を絞り、介入内容を標準化する必要があることを示します。

③ 自己負担増は、低価値医療だけを選択的に減らすわけではない

窓口負担を増やせば、医療利用は一定程度減少します。しかし患者は、医学的に不要な受診と必要な受診を正確に区別できるとは限りません。

日本の2022年改革を用いた準実験研究では、比較的所得の高い75歳以上で自己負担を1割から2割へ引き上げた後、外来医療費は短期的にわずかに減少しましたが、その影響は次第に縮小し、自己負担額は明確に増加しました。需要の価格弾力性は小さく、長期的な医療費抑制効果も限定的である可能性があります。

この結果は高所得者を対象としたものであり、低所得者、フレイル高齢者、認知症患者、継続治療が必要な患者にはそのまま外挿できません。

負担改革では、受診回数や医療費だけでなく、服薬中断、救急搬送、入院、要介護度悪化、死亡、所得階層別の影響を追跡する必要があります。年齢だけでなく、所得・資産と臨床的脆弱性を組み合わせた免除・上限制が重要です。

④ 「攻めの予防医療」は、施策ごとの選別が必要

予防医療という名称の下には、ワクチン、生活習慣改善、がん検診、健診、認知症評価、歯科健診など、効果の大きく異なる介入が含まれています。

一般集団に複数検査を一律に提供する総合健診は、疾患発見を増やしても、死亡や重大疾患を減少させない可能性が高く、不要な追加検査や治療を増やす懸念があります。

また、認知症については、症状や生活機能低下を契機とする早期評価と、無症状者全員へのスクリーニングを区別しなければなりません。無症状の地域在住高齢者に対する認知機能スクリーニングは、利益と害を判断する証拠が不十分と評価されています。

したがって「受診率を上げる」こと自体をKPIにせず、対象年齢、リスク、検査間隔、偽陽性、過剰診断、後続医療を含め、施策ごとの純利益を評価すべきです。

⑤ 休薬・減薬を、単純な薬剤費削減策にしてはならない

ポリファーマシー対策は重要ですが、薬剤数の減少そのものが患者アウトカムではありません。

入院患者に対する構造化された薬剤レビューは再入院をわずかに減らす可能性がありますが、死亡への影響はほとんどなく、生活の質への効果は不確実です。

減薬は、

  • 治療目標

  • 余命とフレイル

  • 有害事象

  • 患者の価値観

  • 中止後のモニタリング

  • 再開条件

を含む個別的な臨床判断として実施すべきです。処方薬剤数だけを評価指標にすると、必要な薬剤まで中止する誘因が生じます。

⑥ 医学部定員削減と医師偏在対策の整合性が不明確

本方針は、医師の地域・診療科偏在を是正しながら、2028年度以降の医学部定員削減も掲げています。

しかし、医師の「総数」と「必要な場所・診療科・勤務時間に配置される医師数」は異なります。定員削減を判断するには、単純な人口当たり医師数ではなく、

  • 医師の年齢構成と引退

  • 女性医師を含む多様な働き方

  • 労働時間規制

  • 診療科別需要

  • 在宅医療・救急・介護施設の需要

  • タスクシフトの実現度

  • 地域別の移動時間

を反映した常勤換算ベースの需給推計が必要です。偏在対策の効果が確認される前に総数を削減すれば、医師不足地域の確保をさらに困難にする可能性があります。

4.EBPMを実質化するために必要な評価設計

本方針が目的、対象、KPI、実績データ、費用対効果を明確化するとした点は評価できます。ただし、行政上の実施件数や利用率だけでは不十分です。

少なくとも、次の4群を同時に評価する必要があります。

患者・家族アウトカム
死亡、入院、救急受診、生活機能、在宅療養日数、生活の質、介護負担、自己負担額。

安全性
受診抑制、治療中断、医療事故、AIの誤記、連携漏れ、サービス撤退地域の発生。

医療従事者・事業者
実質賃金、離職率、時間外労働、記録時間、経営収支、サービス提供量。

公平性と社会的費用
所得、地域、認知症、障害、独居などによる格差と、医療費・介護費・家族の無償労働を合わせた総費用。

政策評価には、単純な導入前後比較だけでなく、段階的導入、対照地域を置いた差の差分析、分割時系列解析などを用い、制度変更による因果効果をできる限り推定する必要があります。

結論

基本方針2026の医療・介護政策は、現場の賃金・経営安定、地域提供体制の再構築、DX・AI、タスクシフト、負担の公平化、予防医療を組み合わせ、制度の持続可能性を確保しようとするものです。方向性には一定の合理性があります。

一方、最大の課題は、次の目標を同時に達成できるという前提にあります。

現場の賃金と報酬を引き上げる
医療・介護へのアクセスと質を維持する
現役世代の保険料を引き下げる
財政支出を持続可能にする

DX、集約化、自己負担増だけで、この4つが自動的に両立するという科学的根拠はありません。

したがって、改革は一律に進めるのではなく、政策単位で対象、作用機序、期待効果、潜在的な害を明確にし、低所得者や医療ニーズの高い人を保護しながら段階的に実施すべきです。特に重要なのは、医療費や受診回数の減少を成功とみなすのではなく、患者に必要な医療・介護が維持され、健康と生活の質が改善したかを最終的な評価基準とすることです。

参考文献

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※この記事はAI共創型コンテンツです。

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コンテンツ生成:ChatGPT 5.6

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医師。2007年からブログ/Xで発信を続けています。2015年に「地域医療ジャーナル」を創刊し、2018年にオンラインコミュニティ「地域医療編集室」を設立。2022年からプラットフォーム「小さな医療」を運営し、エビデンスに基づく地域医療の実践と言葉を届けています。